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唇に媚薬
第11章 純真なカノジョ
「…… “ 姫宮さん ” は」
関係ないとは思いつつも、聞かれた内容の誤解だけは解きたくて
「佐伯……さん。
あなたにとっての葵と同じように……」
「ごめんなさい」
彼は私の仕事の相棒だと、説明しようとしたけど
彼女の震える声に遮られた。
「……ちゃんと、分かってるんです」
「………!」
「蘭さんが、瀬名さんの幼なじみだとしても」
「………っ」
「どんなに想っても、願っても、届かないって」
……冷えた夜風が、華やかな銀座の街を吹き抜ける。
沢山の人が行き交う、喧騒の中でも
私の耳には、もう彼女の声しか聞こえてこない。
「暴走してるって、分かってます」
「………」
「こんなこと、貴方に言うべきことじゃないし
でも私……瀬名さんのこと……」
……声が出なくなった私の前で
これ以上無い程の、綺麗な涙の滴が
彼女の頬をつたって零れ落ちた。
「……蘭さん、ごめんなさい。
でも……どうしようもなく、好きなんです……」