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唇に媚薬
第12章 相棒流儀

「お帰り、早坂」

「………」

「随分時間かかったな……
……って、おい、どうした?」


夜の8時。

フロアの扉を開けて、ふらふらとデスクへ戻ると
1番奥からチームのリーダーが私を二度見した。

顎のヒゲを摩りながら、マジマジと見つめられる。


「負のオーラが見えるぞ」

「………」

「それに顔が怖い」


……失礼な。

年齢がひとまわり離れてるMDチームのリーダーは
思ったことは何でもズバズバ言い放つ性格だ。


「……私、どんな顔してます?」

「何かに酷く打ちのめされた感じ」

「………」

「お、当たった?♪」


そしてカンが鋭い。

はぁっと大きく息を吐いて、持っていたアウターを隣りのデスクの上に置くと
私は立ったまま自分のパソコンの電源を切った。

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