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唇に媚薬
第12章 相棒流儀
しょうもない愚痴を言い続ける私に、心底呆れながらも
カウンター席に並んで、私の隣りに座って
煙草を咥えて、氷をカラカラ鳴らして
……葵は
時折、優しい瞳で私を見てくれる。
その綺麗な横顔に、ドキッとする。
……そう、それだけで私の心は満たされるんだ。
心地良い、数十センチの距離。
だけど、私が彼と過ごす何倍もの時間
決して見る事ができない、仕事をしている彼の隣りには
いつも彼女が……
“ 私……瀬名さんのこと…… ”
「………っ」
……逃げるように、走り去ってしまった。
後ろから、彼女の呼び止める声が聞こえて
銀座店の店長の気配も感じたけど
それ以上聞きたくなくて、猛ダッシュでその場を後にした。
“ どうしようもなく、好きなんです ”
……ずるい。
ずるいずるい。
涙目で、震えて、訴えかけるように
……私に告げるなんて、酷過ぎるよ……