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唇に媚薬
第12章 相棒流儀

「……な、なん…ですか?」


そう聞き返してる間に、姫宮さんの手はパッと離れた。

だけど、あまりにも突然だったから
驚いた体が固まってしまう。


「………」


長いまつ毛の下の、大きな瞳が
真っ直ぐ私を見つめた。



「……なんで、泣くんだよ」

「………!」



……え?

泣く?
誰が?


「早坂が泣く必要は、ないんじゃねぇの?」

「………っ」

「俺の、カンだけど」


なんの……話をしているの?
泣く必要って……てか、私そもそも泣いてないけど……

そう言い返したいのに、なぜか言葉が出てこない。

半ば放心したまま、姫宮さんを見上げると
彼は携帯を革ジャンのポケットにしまって、溜息をついた。


「銀座店の店長も、お前が好きなんだとさ」

「………!」

「ったく、あの女。
他人の事情に首突っ込む癖、いいかげん直せっつーの」

「……えっ……?」

「早坂からも言ってやってくれよ」

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