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唇に媚薬
第12章 相棒流儀

その言葉でハッとして、振り返ると
どこにいても目立つ彼を、遠巻きに見ている女の子達が目に入った。

や、やば!
こーいうのがデマを生み出してしまうんだ!

慌てて瞬きをして、ゴシゴシ目を擦って
溢れた涙を引っ込める。


「お、お見苦しい所を……すみません」


いたたまれなくなって、私は姫宮さんに深く頭を下げた。

ダメだ。
本当におかしい。
会社で泣くなんて、イタイにも程があるよ。


「……なんだか、情緒不安定らしくて」

「だろうな、どう見ても」

「明日また、頑張りますので……」

「いいよ頑張らなくて。
俺、カバン取ってくる」

「今日は帰りますね、お先に……」

「先に下りて、エントランスで待ってろ」


……ん?

途中から会話が噛み合ってないことに気付いて
ゆっくりと上体を起こすと……


「続きは飲みながら聞く」

「……えっ!?」


「そんな顔させたまま帰せねぇよ」


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