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唇に媚薬
第12章 相棒流儀

* * *


“ 帰せねぇよ ”


……不覚にも
弱ってる心臓の、ド真ん中に入ってしまった。

決して恋に落ちたわけじゃないし
ていうか、姫宮さんもそーいう意味で言ったわけじゃないし

わざわざ自分からデマを盛るような真似なんて、アリエナイから
彼の気遣いは断るべきだったんだけど……


「……すみません」


会社から徒歩3分。
高架下に連なる、大衆居酒屋。

多くのサラリーマンで賑わう1番奥の席で
私はもう一度頭を下げた。


「しつこいな」


ビールのジョッキを狭いテーブルの上に置くと
姫宮さんは何度目かの溜息を漏らした。


「さっきから謝りすぎ」

「……でも」

「大体俺から誘ったんだからいいんだよ。
つーか、お前に断る権利あんの?」

「………」

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