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唇に媚薬
第13章 同じキモチ

「あ、私、ちょっとここで……」


2人分の会計を、スマートにお支払いしてくれた姫宮さん。
お店を出て駅まで歩こうとした彼の背中に呼び掛ける。


「あ? 帰んねぇの?」

「いえ、帰るんですけど、その前に」

「?」

「か、彼氏に電話をしてから……///」


恥ずかしくて
声が裏返った挙句、途中でドモってしまった。


「……あっそ」


革ジャンのポケットに手を入れて、振り返った姫宮さんは
ニヤニヤしながら私の前に立つ。


「ノロけてたら、声が聞きたくて堪らなくなったんだろ」

「………!///」

「単純。
分っかりやすい奴〜」


当たってるから反論のしようが無い。
それに
この人のお陰で、モヤモヤした気持ちが吹き飛んだ。


「……ありがとうございました」


そう言ってぺこりと頭を下げたら、彼は余計に笑い出した。

……明日から、完全に立場は下だな。
どれだけコキ使われることやら……

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