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唇に媚薬
第13章 同じキモチ

「電話するのはいいけど、気を付けろよ」


高架下を抜けた、駅へと続く横断歩道の手前で
携帯を取り出す私の斜め上から、姫宮さんの声が降ってきた。


「…? 気を付ける……?」

「自分が弱ってる時は
相手にとっちゃ何でもねぇ事を、ネガティブに捉える習性があるから」

「………!」

「人間ってのは勝手だからな」


……どういう意味??
その言葉の意味を探ろうとして、姫宮さんの顔を見上げる。


「例えば、彼氏がお前の思い通りにならない事が起きたとして」


大通りを行き交う車に目を向けたまま、姫宮さんは淡々と続けた。


「自分に余裕があって機嫌のいい時は許せるけど
落ち込んで気分が沈んでる時は、やけにイラつく」

「………!」

「そーいうのあるだろ?」

「あ、あります。 分かります」

「けど、今夜アシスタントとの間に起きた事も
お前の今の心境も、彼氏は知らねぇんだから」

「………!!」

「変に捉えて勘違いして、勝手に自滅したりするなよな」


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