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唇に媚薬
第13章 同じキモチ

じーんと温かい、心地良い感覚に浸っていると


『で、何があったわけ』

「……えっ?」


再び、葵の声はいつものトーンに戻った。


『寂しくて逢いたくなった理由、言ってみ』

「………!」

『何が不安?』


……この男
どうして、私に対するカンは冴えるんだろう。

すぐ隣りにいる、佐伯さんの想いには気付かないのに


『蘭ー?』

「………」


何でも無いって言っても、どうせ見破られるから


「……ほんとに、ただ声が聞きたかったの」

『あのな…』

「本当よ。
目の前を、さっきからカップル達が幸せそ~に横切るもんだから
私の愛しいダーリンに逢いたくなっちゃっただけ」

『………!』


「……だから
帰ってきたら、いっぱい抱きしめてね」

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