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唇に媚薬
第14章 涙の先に
─── 蘭の夢を見ていたのは本当だった。
海外出張中は特に、不眠症に悩まされて
薬が手放せない程にまで、体の機能が麻痺していたのは
つい最近のことだったのに
……深い眠りから覚めた時
夢の中で楽しそうに笑っていた、あいつの笑顔が
まだ、まぶたの裏に焼きついているようで
……信じたくねぇけど
俺の顔にも、同じ笑みが零れていたんだと思う。
“ ありがと。葵の声、聞きたかったの ”
“ 帰ってくるの、楽しみに待ってるね ”
同じ想いが、相手の心の中にあること
自分を待ち焦がれて、帰る居場所を用意してくれていること
“ 葵、大好きだよ ”
30年間、色んな経験をして生きてきたけど
……俺は、知らなかった。
誰よりも愛しい人が
真っ直ぐな想いを、言葉にして伝えてくれた時
愛してくれていると、実感できた時
……こんなにも、胸が熱く震えることを……