この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
唇に媚薬
第14章 涙の先に
………………………………………………
………………………………………………
「……瀬名さん?」
3月17日。
事務職が帰り始める、定時の夕方6時。
デスクの上にカバンを置くと、後輩の男が顔を上げた。
その目が大きく見開かれる。
「な、なんで本社(ここ)にいるんスか!?」
「いちゃ悪ぃのかよ」
「だ、だって……今日まだ17日ですよ!?」
どれだけ派手に驚いてんだってツッコミたくなるくらい、デカイ声で叫ぶから
周りにいる奴らにも、一斉に注目される。
「全ての任務が終わったから、帰ってきた」
「………!!」
「羽田に着いたのが2時間前」
一度家に寄ってスーツケースは置いてきた。
機密と書かれた重要書類と、ノートPCを取りだして
立ち上がった後輩に向けて、引き抜いたUSBを放り投げる。
「に、任務終了ってことは……!」
「あぁ、トレード成立」
「~~~!!」
「相当数の条件を叩きつけられたけど、やっと落ちたぜ」