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唇に媚薬
第14章 涙の先に

「もちろん、仕事に支障の無いようにします。
今まで以上に頑張ります!」

「………」

「……大事な右腕って
瀬名さん、そう言ってくれたから」

「……!」

「実力がちゃんと伴うように、私……」


言葉に詰まって、佐伯が押し黙った。

……心臓が、締めつけられて
俺はただその目を見つめ返すことしかできない。


“ 社内では、僅差で鈴木さんが人気ですけど
私は瀬名さんが好きです ”

“ 帰り……一緒に帰っていただけませんか? ”

“ 大丈夫です。
もう、ちゃんと分かって、ますので…… ”


「………っ」


……今までの、全てが
愚かな自分の言動と共に、鮮明に蘇ってくる。

眩暈がして、額に手をつけると……


「……佐伯」


蓮が優しく呼び掛けて、佐伯は空のカップを持った。
ペコッと頭を下げた気配を感じて、再び視線を戻す。


「難しい案件ですが
ご協力の程、宜しくお願いします」

「………!」

「出張中のご報告は、明日お聞きしますね」


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