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唇に媚薬
第15章 Yours forever

「え? また銀座店に誤送したの?」


時刻は、夜の8時10分前。

パソコンの電源を落として、立ち上がろうとした私の耳に呆れ声が届いた。

バッグを持ちながら、その声のした方をチラ見をすると
受話器を片手にゲンナリしたリーダーの姿が目に入る。


「それ、明日の朝一で使うんだよ?」

「………」

「銀座店、この時間はもう閉店しちゃってるんだよ?
スタッフが帰る前に取りに行かなきゃいけないんだよ?」


……電話の相手は、おそらく仕入業者。

会社設立当初から続く、重要な取引先だけど
なにせ単純なミスが多くて困りもんなのだ。


「困ったなぁ」

「………」

「今日さ~、僕の妻の誕生日なんだよね。
速攻帰らなきゃいけないのになぁ……」


そうだよね~
今夜はお祝いだから早く帰るんだって、1ヶ月も前から宣伝してたもんね。

リーダーの溜息を聞きながらも
私は速やかにイスをしまって、そそくさと出口に向かって歩き始めた。


……だって

すっごい嫌な予感する……!

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