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唇に媚薬
第3章 強情プリンセス

「……Si. non ti preoccupare」


……ん?
なんだって?

その背中に近付くにつれて、聞こえてきた葵の声。

早口すぎて分かんないけど
日本語じゃないし、英語でも無いような……
カナダ行ってたんじゃないの?

……いや
てゆーかあなた
なんでそんなペラペラ話せるの?


「Grazie.Sei molto gentile」

「…………」

「Saluta John da parte mia……
……!」


残り1mの距離で、私の気配に気付いたのか
会話の途中で葵が振り返った。
バチッと目が合って、足を止める。


「…………」


や、やばい……一瞬落ち着いた心臓がまた……

時刻は午後の2時。
いつも夜飲むだけだった葵と、こんな時間に逢うなんて。

1週間前の雨雲はすっかり無くなって
冬空から太陽が降り注ぎ、空港内も明るい。

……どうしてだろう
なんかめちゃくちゃ恥ずかしい!

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