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唇に媚薬
第16章 唇に媚薬

不自然な笑顔になった葵が、さっと視線を外した。

……左!!


「私が右ならあなたは逆なのよ!」

「~~危ねっ……!」


離れていく肩を掴んで、ガバッと上半身を起こすと
180度回転させて、今度は私が葵の体に跨った。


「……お前、なにか知っ」

「何も知らないわ」

「………!」

「いくら恋人の私でも
仕事のパートナーである2人に、首を突っ込むことはできませんから」

「………!!」

「 他・人・で・す・か・ら 」


眉を寄せて唖然とする葵の両耳に、指を添える。

……右側2つ・左側3つ

塞がりつつあるこの若気の至りに、ジャラジャラ付けてたあの頃は
面倒だからという理由で、自称彼女の虚言を放置していたせいで

“ 瀬名葵は3股4股当たり前 ” と、周りが騒いでいた。



「……他人とか言うなよ」


耳たぶを引っ張る私の腕を、優しい力で握って
倒されたまま、葵が小さく呟いた。


「言っただろ。
俺は、お前だけだって」

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