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唇に媚薬
第4章 添い寝と腕枕

……涙を拭うことも、抱きしめることも忘れて

俺の胸に突っ伏す蘭を、暫く放心して見ていた。

冷えた体に、蘭が触れる場所から温もりが伝わってきて

……こんな穏やかな気持ちは、久しぶりで


「……蘭」


やっと動いた右手を、頭の上に乗せる。


「バカだな。 変な捉え方するなよ」

「………」

「ちょっとした安定剤だ。
常用してるわけじゃねぇし……」

「さっき病んでるって言ったわ」

「………!」

「嘘つき」


それはジョークなんだけどって言おうとして、言えなかった。

背中に手を回して、さらに抱きしめてくる蘭。
熱い想いが込み上げてきて、俺は髪を撫でることしかできない。


「……もう離れろって……」

「嫌」

「それなら、本気で部屋に連れてくぞ」


添い寝なんかで済む気がしない。
当然、蘭も分かってるだろうし……


「……うん、行く」

「………!」


断るか怯むか、どっちかだろうと思っていた俺に向けて
蘭は、花が咲いたような笑顔を浮かべた。


「葵の傍に居たい」

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