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唇に媚薬
第5章 攻防ゲーム
葵とキスをしたのは、小学生の時。
忘れてたけど、私のファーストキス。
でも、初恋では無かった。
お互い単なる興味本位だったから。
学生時代の葵の女なんて、数える気すら起きない。
自称彼女と言い張る女を含めれば、相当な人数だったと思う。
そんなイケメンの幼なじみは、私にとっては貴重な存在で
在学中、葵の友達を何度も紹介してもらっていた。
……でも、結局誰ともうまくいかない私。
キレ気味でキューピット役を辞退されて、今に至る。
常に運命的な出逢いを求めて
刺激的な毎日を夢見て
現実から常に目を背けていた。
そんな私が
マンションの共同エントランスで
ずっと友達だった幼なじみに
好きだと一言、定番な告白をされたのだ。
トキメキもへったくれもない。
恋愛対象外だと突き放して
別の人と出逢いたいと告げた男になんて……
……なのに
「……おい、いいかげん立てよ」
エレベーターを降りると、片手で私を支える葵が溜息を漏らした。
分かってる。
私も、いいかげんそうしたいんだけど
……腰が砕けてるんです。