この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
唇に媚薬
第5章 攻防ゲーム
1LDKのシンプルな間取り。
生活感がまるで感じられない、最低限の家具しか無い空間。
高層階の窓の外では、夕焼けが赤く空を染めていて
週末の夜を迎えようとしている。
荷物を下ろすように、少々乱暴にリビングのソファに落とされたけど
葵はコートを脱いで投げ捨てると、再び私の手を取った。
わ、わ、待って待って……!
「……あ、あの……っ」
持ち上げられようとした体に力を入れて、ソファに留まる。
「なに、まだ腰抜けてんの?」
「う、うん……」
「じゃあ掴まって」
「な、何で!?」
「何でってお前……」
呆れた顔で私の前にしゃがんだ葵。
目線の位置が同じになる。
「ここはリビング。 寝室は隣り」
「~~~っ」
「運んでやるから。
ほら、来いよ」
ストップストップちょっと待って!っと叫ぶ暇もなく
私の背中と膝の裏に伸びてきた、引き締まった両腕。
軽々と横にして持ち上げられて……
こ、こんなスマートなお姫様だっこがあるのか……!