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唇に媚薬
第7章 蓮愛相談室
「瀬名、そんなに感動したのか」
ワンフロアぶち抜きの社員食堂。
何千人という人間が集う、時刻は昼の12時半。
「……感動?」
定食を半分まで食い終わった所。
左手に持っている携帯から、視線を上げて聞き返すと
同じAランチをトレイに乗せた男が、目の前の椅子を引いた。
「イエローナイフのオーロラ。
思い出して思わずふふふっと微笑んでしまうほど、良かったんだな」
「………!」
「病み防止のアドバイス料、まだもらってないけど?」
テーブルを挟んで向かい合う形で座ると
箸を手に取った蓮が、白い歯を見せた。
……ふふふって、なに。
「……微笑んでいません」
「微笑んでました」
「俺は微笑むなんて素敵なことはできません。
そんなキャラじゃねぇ」
「そうなんだよ。
カナダから帰ってくる前のお前は、そんな風に爽やかに優しく笑う奴じゃなかったはずなんだ」
「…………」
「マントを翻して、白タイツ履いて白馬と共に颯爽と現れるような
そんな素敵な王子様みたいなキャラではなかったはずなんだ」