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唇に媚薬
第8章 嫉妬姫

“ はいはいゴメンねー離れてくださーい ”
“ 私の男に何の用? ”
“ 悪いけど、彼は私にベタ惚れなのよ ”


一生結婚出来ねぇなと言われるだけあって、性格が悪い私。

このパターン、今までの私だったら確実に割り込んでいって
ドヤ顔で彼氏の腕を奪い返していたことだろう。

……でも


「………」


心臓がバクバク。
ギュウッて締め付けられて、苦しい。

だって葵と並んで歩き出した彼女。
ちっちゃくて、いかにも守ってあげたいって感じで

背が高くて、スマートな葵と
すごくお似合いなんだもの。


「……あ、おい」


ポツリと呟いた声は届かない。
駅に向かう2人の後ろ姿が段々と小さくなっていく。

ねぇ、彼女は誰?
これからどこに行くの?
飲みに行ったりするの?


「………っ」


……え?
いやいや待って。

あはは、まさかそんな

……って私、泣いてる?

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