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翻弄の果てに
第9章 環と祥子
職場の最寄り駅。
東口は賑やかな繁華街が広がるが、こっち、西口は、人影まばらで、開発前のままだ。

そんな中にある、古い喫茶店に祥子は居た。


『ゴメン!これでも急いだんだけど、待たせちゃったね。』

『大丈夫です、来たばかりですから……』

『あ、んー、ブレンド…いや、アメリカンで。』

注文して、タバコに火を点けた。
祥子は、ずいぶん待った筈だ。
コーヒーカップからの湯気はない。水の氷も溶けきって、コップの周りは濡れていた。



『さて、しょこちゃん。どした?失恋か?恋バナは俺にはわからんなあ……』


『最初から……無いんです……』

消え入るような声で、確かに祥子はそう言った。



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