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翻弄の果てに
第9章 環と祥子
祥子は、さすがに口をきける状態ではない。

悠太の、祥子が知らない一面を明らかに晒された環の躯は、言葉を失い、思考を停止させるには充分過ぎる程強烈だった。

環と悠太の関係、それを承知の上での環の行動。
これを、祥子の中で理解させるだけでも至難であり、相当の時間がかかっていた。

そして、目の前にある、この姿は、悠太の性癖の産物……



環は、浴衣を纏い、湯舟に入った。

『見るに堪えないわよね。安心して。悠太は本来ならこんなことはしないわ。』

『だって……』

『私が、お願いしたのよ。私の躯の奥に摩り込まれた被虐の記憶……』

『被虐の…記憶…?』

『私の最期に相応しい交わりにしたかったから。』

環は淋しそうに微笑み、傷を隠した浴衣に、掬った湯をかけた。




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