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翻弄の果てに
第19章 荒波
『気がおかしくなりそうなんだ!祥子、助けてくれ!』


裸に剥かれた祥子の躯にむしゃぶりつく悠太に、交わりを愉しむというものはなく、隠れ場所を探すように、震える心を祥子の肌に委ねている。


『あなた…』


祥子は悠太の気持ちを受け止めようと決めた。

躯の力を抜き、悠太の髪を撫でる。
母乳に吸い付く赤子のように乳首をまさぐり、荒い息を吐き、呻くように小さく唸りをあげている。

両の手は躯のあちこちをまさぐり滑らせるが、ひたすら我が身の居場所を探すようにせわしなく、気持ちのやり場を失った悠太を物語っていた。


悠太の16年は、全て未来とあった。未来だけに与えた自分の16年だった。

溺愛、と、一言で集約できない。偏った愛情だった。

悠太にもそれは解っている。悠太自身の中にある、あの男と環の光景が、何十年過ぎた今でもフラッシュバックし、未来に重なってしまう…

未来への過剰な保護意識が、今の悠太を苦しめていた。




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