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short story
第9章 天の川 /yuriko
―――後日、お父さんの暮らすアパートにやってきた私は夜、携帯電話の写真を見せながら色んなことを話していた。
「で、これがいちかの短冊でこれがみなみちゃん。遥斗とあゆ美も書いたのよ・・・正確にはいちかに書かされて」
お父さんは目を細めて画像を見ている。
「ちなみにこれは私の」
「母さんらしいな」
「ふふっ・・・だって孫は可愛いんだもの」
子どもが苦手で不器用なお父さんは自分の子どもにも不器用だった。
それを遥斗は汲んでいたように思えたけどあゆ美は勘違いしているところもあったようだ。
「お父さんいちかをネズミーランドに連れてく約束したんですって?」
「もう知ってるのか」
「ネズミーランドなんていつ以来かしら。遥斗が幼稚園の時が最後よね」
「あの時はあゆ美が迷子になったな・・・」
「そうそう、生きた心地しませんでしたよね」
「今度は大人が沢山居るから平気だろう・・・でも目を離さないようにしないと」
「ふふ・・・そうですね」
お父さんの肩に頭を預けると二人の空気が緩む。
「お父さん、私・・・今が幸せだなって思うんですよ」
「母さんには苦労を掛けたな」
私は黙って首を振った。
それから二人で気持ちだけを共有する。
私たちに言葉はそれほど重要ではない、こうやって一緒に居れるだけで自然と想いが伝わるから。
「・・・定年になって家に戻ったら旅行でも行かないか?」
「旅行ですか?」
「みなみさんのご両親は良く行っているんだろう?羨ましがってたじゃないか」
「でも・・・無理なさらなくても」
「・・・私も定年後は由里子とゆっくり過ごしたいと思ってるんだ」
この人は口下手で、愛の言葉なんて囁いてくれたことは数えるほどしかない。
それでも私には分かる・・・ちゃんと伝わる。
それが歳月の賜なら、お互い皺が深くなるくらい何てことないと思った。
「・・・はい」
お父さんが安心した時は必ず嬉しそうに笑う。
今だって・・・
「今年の七夕は雨が降りませんでしたね」
「そうだな」
「いちかの照る照る坊主のお陰かしら」
次の写真を見せながら照る照る坊主の話もする。
お父さんはまた目を細め時々笑って私の話を聞いていた。
この人と結婚して良かったと思った。
「で、これがいちかの短冊でこれがみなみちゃん。遥斗とあゆ美も書いたのよ・・・正確にはいちかに書かされて」
お父さんは目を細めて画像を見ている。
「ちなみにこれは私の」
「母さんらしいな」
「ふふっ・・・だって孫は可愛いんだもの」
子どもが苦手で不器用なお父さんは自分の子どもにも不器用だった。
それを遥斗は汲んでいたように思えたけどあゆ美は勘違いしているところもあったようだ。
「お父さんいちかをネズミーランドに連れてく約束したんですって?」
「もう知ってるのか」
「ネズミーランドなんていつ以来かしら。遥斗が幼稚園の時が最後よね」
「あの時はあゆ美が迷子になったな・・・」
「そうそう、生きた心地しませんでしたよね」
「今度は大人が沢山居るから平気だろう・・・でも目を離さないようにしないと」
「ふふ・・・そうですね」
お父さんの肩に頭を預けると二人の空気が緩む。
「お父さん、私・・・今が幸せだなって思うんですよ」
「母さんには苦労を掛けたな」
私は黙って首を振った。
それから二人で気持ちだけを共有する。
私たちに言葉はそれほど重要ではない、こうやって一緒に居れるだけで自然と想いが伝わるから。
「・・・定年になって家に戻ったら旅行でも行かないか?」
「旅行ですか?」
「みなみさんのご両親は良く行っているんだろう?羨ましがってたじゃないか」
「でも・・・無理なさらなくても」
「・・・私も定年後は由里子とゆっくり過ごしたいと思ってるんだ」
この人は口下手で、愛の言葉なんて囁いてくれたことは数えるほどしかない。
それでも私には分かる・・・ちゃんと伝わる。
それが歳月の賜なら、お互い皺が深くなるくらい何てことないと思った。
「・・・はい」
お父さんが安心した時は必ず嬉しそうに笑う。
今だって・・・
「今年の七夕は雨が降りませんでしたね」
「そうだな」
「いちかの照る照る坊主のお陰かしら」
次の写真を見せながら照る照る坊主の話もする。
お父さんはまた目を細め時々笑って私の話を聞いていた。
この人と結婚して良かったと思った。