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ピンクの扉
第14章 性の不一致
智一と亜里砂が妖しい関係を結んでいる頃、
桃子は男とラブホテルの一室にいた。
昼間に半ば強引に青姦され、
桃子の心は男から急激に遠ざかった。
男の問い掛けにわざと無視したり、
会話のキャッチボールさえ成り立っていなかった。
よそよそしくなった桃子に普通の男なら
虫の居所が悪くなったなと感じるのだろうが
この男は鈍感というか
女の扱いに慣れていないというか
自分に興味がなくなっているということにさえ気づかずにいた。
「なあ、せっかくこういうところに泊まったんだから
一緒に風呂に入らないか?」
昼間、私にイヤな思いをさせておきながら
馴れ馴れしいわ…
この人、鈍感なのかしら。
私が不機嫌になっていることも気づいていないの?
「ごめんなさい、今日は疲れちゃったから
一人でゆっくり湯船に浸かりたいわ」
そう言ってやんわりと拒否してやりました。
そんなにイヤなら
サッサと別れてしまえばいいと思われそうですが、
今、私がどの辺りにいるのかもわからず、
すれ違う車さえなく、
ひたすら一本道が伸びる広大な大地を
ひとり旅できるほど
私は大胆な神経の持ち主ではなかったんです。
それにお別れするにしても
逃げるように別れるんじゃなく、
どこかの駅で
綺麗にサヨナラをしたかったんです。