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want to be ...
第17章 俺と杏奈の関係 蒼汰SIDE
一番印象強く残ったのがあの背中を覆う長い黒髪だったから、見落としたのかもしれない。
…まさか、俺達が乗る前から目の前にいた事を知るのは少し後の事だったが。
最初の頃は意識して探してたが、いないと分かるとすぐに興味が薄れ、隣に座る美咲にだけ意識を集中させた。
あどけない可愛い寝顔。
肩にかかる柔らかい重み。
時々香るシャンプーの匂い。
あーあ…可愛い。
俺のものにしたかったな。
隣にいるのに、遠い所にいる…もう二度と手が届かない女。
俺ではない、他の男と幸せになるべき女。
美咲との電車通学は様々だった。
今のように俺に寄りかかって寝てたり、2人で音楽を聴いたり、他愛ない話をしたり。
大樹さんのセックスが激しすぎて歩けなかったり、真っ最中の時は大学来ないし、1限がない時は勿論時間に合った電車に乗る。
美咲を1人で電車に乗せる事は決してなかった。
そしてその内、漸く気付いたんだ。
俺達の目の前にいつもいる存在に。
俺達がいつも乗る時間の電車は、殆ど周りの乗客の顔触れが変わらない。
同じ駅で同じ客が乗り降りする…その繰り返し。
そんな中、座る位置も自然と決まってしまうもの。