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want to be ...
第29章 素直な気持ち 雫SIDE
「…」
無言の車内。
話を終えて、早々に西野先生の家から出たあたし達。
なんだか、とんでもない事になっちゃった…
瑞季に手を引かれるまま車に乗り、瑞季の家方面に向かって走ってる。
聞きたい事がいっぱいある。
言いたい事がいっぱいある。
酔いはすっかり冷めきってて、さっきの西野先生の家での話とか、婚姻届とか、あたし達のこれからの事で頭がごちゃごちゃしてる。
聞きたい…
聞きたい、よ。
何であたしに婚姻届にサインさせたの?
あの夫の欄には、既に瑞季の名前が書かれていて。
その隣に、あたしも名前を書いたけど…
あたし、正式なプロポーズは貰ってないよ?
「雫が大学卒業したら結婚しよう」
って…そう言ってくれたけど、本当に、そうなの?
指輪も貰っちゃってるけど…本当に?
あたし達は、夫婦になれるの…?
それに。
瑞季と西野先生は、付き合ってたんじゃないの?
なのに何で西野先生は理事長とセックスしてたの?
賄賂って何?
「この子だけだけど」
って何?
もう、分かんない…
頭の中はぐちゃぐちゃで、ごちゃごちゃで、ついにあたしの目から涙が溢れた。
俯いてるあたしの手に涙の滴が次々と落ちる。
すると、瑞季の声が響いた。
「雫。家に帰ったら話すから…
頼むから、変な誤解はしてんじゃねぇぞ」
話すって、何を?
変な誤解って?
瑞季がハンカチを差し出してくれる。
それに目を当てたまま、瑞季の家に着くまで、あたしの涙は止まらなかった。