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BLACK WOLF
第11章 満月の夜の狼
━━━━━「お、お嬢様、そろそろ何か召し上がらないと体に毒ですよ」
久し振りに聞いた酒井さんの声。
あの優しかった酒井さんのことすら、今はただの嘘つきにしか思えない。
この邸に連れ戻されてから早5日。
私の体を好き放題弄った後に私はまた部屋に戻されてしまった。
黒埼さんが私のためにと用意してくれたあの豪華な部屋。
けど、ここへ連れ戻されてから全く食欲が沸いてこない。
空腹は感じてるのに胃が何も受け付けない。
そんな私を心配して、ハウスキーパーの酒井さんが私の様子を伺いに来たのだ。
「お嬢様…」
「いらない。酒井さん、いつもならもう帰ってる時間じゃないの?何でまだいるの?私を見張ってるの…?」
「いえ、そんな…。ただ、旦那様もお嬢様の事を心配なさって…」
電気も付けず真っ暗な部屋の中、ベッドの上で、まるで壊れた人形のように、踞ったまま…。
酒井さんにすら口調がきつくなる。
あの人が私の心配なんかするはずない。
せいぜい大事な愛玩人形のメンテナンスの心配ぐらいだろう。
もうここから出られないのかと思うと、何もしたくなくなる。
何もかもが面倒くさくて、辛い。
「何も食べたくない…。いらない…」
「ですが…」
「いらないって言ってるでしょ?ほっといて…」
どうせこの酒井さんだって、あの男にお金を貰ってる雇われの身だ。
私の味方なはずないし、私を逃がしてくれるわけでもない。