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BLACK WOLF
第11章 満月の夜の狼
「お嬢様…」

「後は俺がやるから、下がってなさい」



…っ!

その声に体が震えた。

ふっと見ると、酒井さんを押し退けるように黒埼さんが私の部屋に入ってきた。

「かしこまりました」

ご主人様には逆らえないのか、酒井さんはその場から立ち去ってしまった。

残ったのはこの男と私の2人。

別に今更、この男を怖いと思うこともない。


「いつまでそーしてるつもりだ?そのまま餓死するつもりか?」

「ほっといて…」

「前にも言ったが、お前は俺が金で買った。俺の許可なく勝手なことはするな」



…自分の命すら好きには決めれないってことか。

今は死ぬことすら頭にない。

そんなこと、考える余裕もない。



すると、私が踞るベッドに腰をかけてきた。

大きなベッド、2人で乗っかってもまだまだ充分なスペースがある。

「せめて、これでも食え」


私の目の前に差し出されたお皿には、真っ赤な苺が。

…まるで血のように深紅に熟れた苺すら今は気持ち悪い。

「…いらない」

「そうはいかない。鶏ガラみたいな体、抱いても楽しめねぇからな」

「━━━━んっ」

私の顎を掴み、口にムリヤリ苺を捩じ込んできた。

柔らかい苺が唇で潰れて、原型を崩しながら口内に流れ込んできた。

甘い味が口に広がるが…

「うっ、ん…」

美味しい、なんて感じない。

味覚すら壊れてしまったようだった。

「や、やめ…っ、んぐ…」

「だったらちゃんと食え」

黒埼さんの手を払い除けようとしたが力じゃ敵わない。





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