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BLACK WOLF
第12章 その鋭い牙で仕留める如く









━━━━「い、今…、何て…?」

「ここを引っ越す」

ある日の午後の事、部屋でいつも通りぼんやりと時間を潰すだけだった私の元へやって来た黒埼さんが告げた一言。

ベッドに寝転び死人のような私に黒埼さんはそう言った。

「引っ越すって…、どこに、ですか…?」

「L.A。仕事の都合でな。元々本社はそっちにあるんだ」

開け放ったドアに持たれながらそう言った、が

「私は…?」

「一緒に来るんだ」


わかってたことだ。

この人が私を手放すわけがない。

でも…っ。


「い、嫌です。私、行きたくありません…」

こんな台詞、黒埼さんに通じるわけないけど、それでも日本を離れたくない。

L.Aなんて慣れない土地に行くだけでも抵抗があるのに、この人と一緒にそんな遠くに行ったら今度こそ逃げ出せない。

何より、ハルちゃんのいない国になんて行きたくない。

考えただけで怖い。



恐々ながらに黒埼さんに訴えた。

ハルちゃんの名前を出せば何をされるか…、って、名前を出さなくても黒埼さんは多分気づいてるだろうけど。



「…そう言うと思ったよ」

「え…?」





黒埼さんらしくない返事が返ってきた。

いつもの黒埼さんなら強引に私の意見など捩じ伏せてしまうのに、今日はいつもと違う。



黒埼さんの方を見ると、いつもの狼の目じゃなく、初めて出会った頃のようなあの優しい目をしていた。

穏やかで、でもどこか寂しげで。







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