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BLACK WOLF
第12章 その鋭い牙で仕留める如く
「あの、黒埼さん…」

「さすがにそんな遠くにまでムリヤリ連れて行くわけにはいかねぇだろ?お前が嫌がるならそれ相応の待遇は考えてるさ」






それ相応の待遇…?

まさか…っ?






胸が高鳴った。








嘘だ。

もう騙されない。

黒埼さんがあんな優しい目をするときは絶体何かがある。

初めて会った時もあの優しい目に騙されたんだ。

いつかのお風呂場でだって、ムリヤリ卑猥な言葉を言わされてこの人の名前まで呼ばされて…、そんな酷いことをする人だ。

絶体嘘だ、何かがある。




でも、嘘で引っ越すなんて事はしないだろう。

いくらお金持ちとは言えこんな豪邸をさっさと手放すわけない。





それでも、歓喜にも似た動悸は止む気配がない。






まさか、本当に…?







もしかして、私を解放してくれるの…?










「いつまでもなつかねぇペットなんてつまんねぇし、ご主人様を厳まねぇ人形も御免だ。あの幼馴染みのとこへでも行けばいいさ…」

「あ…あの」

「お前の反応や態度を見てればわかるよ」










本当に…

本当に私は…












「帰れるの?ハルちゃんの元へ帰っても…っ!?」

身を乗り出し興奮しながら訴える私に黒埼さんは意味深に寂しげに微笑んだ。

今度こそ、本当に帰れる。

ハルちゃんの元へ帰れる。

他の誰でもない黒埼さんが「幼馴染みとこへ行けばいいさ」と言ったんだ。

私は…解放されたんだっ!











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