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BLACK WOLF
第2章 甘い誘拐
凄いな。
こんなややこしそうなマナーをまるで当たり前のようさらっとこなして。
本当はこんな田舎娘とお茶をするような人じゃないんだろう。
「で、後は注ぐだけです。美味しいですよ、ここの紅茶」
それでも、嫌な顔をせずこーやってフォローしてくれてる。
きっと凄くモテるだろうな。
勝手な予想だけど、お金持ちで優しくて紳士で、それにちょっと恐くて獣みたいな目をしてるけど
けど、凄く綺麗な顔立ち。
黒埼さんが淹れてくれた紅茶を一口飲んでみた。
「わ…、美味しい…」
「お口に合ってよかったです。砂糖やミルクは?」
「あ、大丈夫です」
さすが、本場イタリアの高級ブランド紅茶。
私の人生であるかないかの経験かも知れない。
「さて、じゃぁ、私と舞さんのお母様の関係ですが━━━━」
「え?あ…はいっ!」
…うわ、紅茶に夢中で一瞬忘れてた。
けど、ずっと知りたかった疑問。
さっきは一瞬はぐらかされてしまったけど、今度こそちゃんと聞けるんだ。
こんな凄そうな人と母の関係を。
胸が煩いぐらいにドキドキと高鳴る。
「私とあなたのお母様は━━━━━━━」
やだ…、今になって聞くのが恐い。
変な汗が頬や背中を伝う。
このお店、暖房効きすぎなんじゃない?
汗が出てきたし、暑さのせいで耳鳴りまで…。
それに、何か━━━━━━
貧血みたいに、意識が━━━━━━━。
バタンッ…
「今ここで、正体を明かす訳には行かないんです」
黒埼さんの声が、遠くに聞こえた。
ほら、言ったでしょ、私。
この男には近づいちゃ駄目だって。