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BLACK WOLF
第13章 尻尾を逆立て、爪を磨き
私は
ハルちゃんを守りたかっただけ。
キィー…
「いつまでそーしてる気だ?」
重そうな鉄のドアの開く音。
ぐったりする私とハルちゃんを外部からの一筋の光が照らし出す。
重々しいドアを開き室内に入ってきたのは黒埼さんだ。
入って来た、というより戻ってきたと言うべきか。
「そこの坊やを送らなきゃならないんでね。タクシーを呼んだ」
…タクシー?ハルちゃんを送る?
え…、ハルちゃん、どっか行っちゃうの?
やっと会えたのに、ここでまたさよならなの?
何の言い訳も謝罪も出来ずにまた…?
私、あんな恥ずかしいところを見られたまま?
考えたいのに考えられない。
何もかもが壊れて、嫌になって…。
ただ、涙を流すだけの壊れた人形になった気分だ。
「さて、と。家まで送りましょうか?永野 陽人君」
カツカツと靴音を鳴らし床に倒れ込むハルちゃんに近づき、すっと手を伸ばした。
その姿はまるで、何事もなかったかのように振る舞う紳士そのもの。
「手をどうぞ」
「てめぇ…」
その手を取ることもなく、黒埼さんを見上げるハルちゃんのその目は怒りに満ちていた。
ワナワナと震える体を起こしながら
「ふざけんじゃねぇーっ!!」
立ち上がったその刹那、聞こえて来たのはハルちゃんの怒鳴り声。
「ハルちゃ…っ」