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BLACK WOLF
第6章 狼は爪を研ぎながら

「さ、酒井さんは…ここの住み込みじゃないんですか…?」
「はい。私の自宅は隣町です。週に3日ほどここに通わせてもらってて━━━━━━」
喉まで出てた助けの声が一気に引っ込んでしまった。
助けの言葉を飲み下した。
何で…?
何で"助けて"って言えなかったの…?
今なら逃げられるかも知れないのに。
こんな優しいハウスキーパーさんなら私の事を逃がしてくれるかも知れないのに。
「旦那様は用心深い方ですから自分以外の人間を自宅に泊めるなんて事はないみたいです。それが例えご友人でもです」
自分以外の人間は自宅に泊めない?
用心深い…?
じゃぁ、私は…?
私はムリヤリここに連れて来られて、ムリヤリここに住まされてる。
私の服や化粧品を揃えて、私が住めるようにしてくれてる。
「さ、ご夕食を召し上がって下さい。何かあれば何なりとお申し付け下さい」
そう言って酒井さんはまたキッチンへと下がってしまった。
私は黒埼にとって人間じゃなくペットみたいなもんだから?
ううん、黒埼ほどのお金持ちなら本物のペットぐらいいくらでも買える。
召し使い扱いをさせる訳でもなくこんな優しそうなハウスキーパーさんまで雇ってる。
ただの愛玩人形が欲しいなら━━黒埼ほどの男ならこんな強引なことしなくてもそれを望む女性なんてたくさんいるだろう。
粗末に扱う訳でもなく綺麗な部屋まで用意して、自分と同じ食事まで用意してくれてる。
両親が黒埼に残した借金がいくらかはわからないが私を買い取りここに置いておくより、夜の街に売り払うとかもっと違う方法があったはずなのに。
何なの?
黒埼がお金にもならない私をここに止めておく理由って、一体…?

