この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
あの店に彼がいるそうです
第15章 あの店に彼がいるそうです

「今月の集計結果発表をする」

 篠田の前に、全員が半円状に集う。
 閉店後、客のいない店内にホストが固まっている光景は何度見ても異様な迫力だ。
 俺は以前類沢さんが立っていた辺りを見つめながら、発表を待った。
「トップは……」
 篠田が言葉を区切る。
 紙面に眼を泳がせて。
 全員が息を潜める。
 長らく変わることの無かったトップ。
 恐らく、今のナンバー入りしたメンバーが入った時から変わることの無かったトップが、初めて名を替える。
 店から本当に類沢さんの存在が無くなってしまう、そんな瞬間。
 聞きたくない。
 でも、誰もが気になっていたこと。
 とうとう、これで……
 生唾を飲む。
 篠田の口が開く。
「トップは、紅乃木哲。前回の類沢の額まで、あと少しだった。よくやったな」
 アカが俯きながら前に出る。
 それからくっと顔を上げた。
 鋭い眼で。
「次は、超えるよ」
 バシンと封筒を受け取り、自分の派閥に戻る。
 心から出た、篠田の称賛が長く空気を固まらせた。
 安堵のような。
 落胆のような。
 そんな声だったから。
「二番手は愛だ。伸び続けているな」
 ボブヘアの後ろ姿はすぐわかる。
 あの騒動もあり、距離を置いていた愛だが、千夏とはよく接しているのを見ていた。
 その千夏を追い抜かしたものの、羽生兄弟は拍手を送った。
 給与を受け取った愛を一瞬抱き寄せ、篠田が何か囁いた。
 それからすっと離れる。
 俺には「これからも頑張れ」という喝に見えた。
「三番は……」
 羽生千夏。
 そうだと思っていた。
 恐らく誰もが。
 だが……
「紫野恵介」
 しん、と静まり返る。
 円の外から足音が近づく。
 なんとなく円が割れ、道を開いた。
 キャッスルからの移籍。
 一か月足らずで、トップ3に入った事実。
「ありがとうございまーす」
 紫野の笑い交じりの声に、場が殺気立つのを感じた。
 ああ。
 俺、ずっと考えてる。
 これをあんたが見てたら何て言うかなって。
「羽生千夏」
 四番手に落ちた千夏のことも。
 一夜の歯を食いしばった顔も。
 瀬々晃のことも。
 なあ。
 どんな顔するんだ。
 類沢さん。

「宮内瑞希」

 チーフが俺を呼んだ。
 呼ぶはずないのに。
 なんで。
「瑞希。五番はお前だ。瑞希」
 ウワッと視線を感じた。
 一瞬で全身の鳥肌が立った。
/342ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ