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あの店に彼がいるそうです
第6章 随分未熟だったみたい
 翌日、初めての休みがきた。
「ホストにも休みってあるんですね」
 歯を磨きながら呟く。
「どこか行くの?」
 いつもよりラフな格好の類沢。
 オフモードってやつだろうか。
 結んでない髪は動くたびにサラサラと揺れる。
 俺は口をゆすいで答えた。
「河南に会いに行こうと思います」
「送ろうか?」
「まさかっ」
 遠慮じゃない。
 類沢が送ってきた理由の質問攻めが想像出来るからだ。

 待ち合わせは駅前の喫茶店。
 なんの捻りもないこの場所が、ひどく懐かしい。
 久しぶりに故郷に帰った気分。
 ホストの瑞希じゃなくて。
 類沢さんの居候じゃなくて。
 学生の瑞希。
 携帯で時間を確認する。
 河南が遅れるなんて珍しい。
 用意したプレゼントを眺める。
 長い間寂しい思いをさせたし。
 二週間ぶりか。
 大学には休学届けを出した。
 友人は全員本気にしてくれなかった。
 そりゃそうだろう。
 教授には流石に誤魔化した。
 大学行かずに歌舞伎町に通っているなど話せるはずがない。
 単位全て抹消されそうだ。
 冷静に考えたら俺、本当にありえない生活している。
 特に一昨日と昨日。
 歌舞伎町ベスト8は凄かった。
 凄いというか、最早麻痺してるけど。
 なんで六十近い吟じぃなんて存在があるんだとか。
 如月紫苑が恐すぎるとか。
 空牙もそうだが年齢不詳が多すぎるとか。
 珈琲を飲みながら記憶を整理する。
 しかも、あのメンバーとシエラのみんなが集まった時、俺シャツに下着しか着てなかったなんて。
 あ。
 いらないことを思い出した。
 火照った顔を包む。
「瑞希?」
 いきなり声がかかり、ビックリして顔を上げる。
「えっ……なにその格好」
 帽子を被ってワンピース姿の河南が俺を指差し止まっている。
「なにって」
「なんか……ホストみたい」
 絶句なんてもんじゃない。
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