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藤の舞
第12章 飢えと渇き
「わかりました。」

今、産婦人科は医療事故などの対応から産科を閉鎖する個人病院が増えている。

それに伴い、産科を持つ病院に個人開業医同士で応援する体制を整えつつあり、
うちの支部でも、先月からそのシステムを導入したところだった。

院長に体だけでいけばよいと言われて、そのままタクシーに乗り込んだ。



車中で瞼を閉じる。
無声映画のように、奥さんと院長と先生の乱行シーンが流れた。




「お客さん、着きましたよ。」

そのままうとうとしていたようで、運転手に起こされる。

車は病院の駐車場の裏口スペースに寄せられていた。

「ありがとうございます。」

ヘルプをきちんと務めなければならない。
大きな深呼吸をして、裏口から入る。

狭い通路を進むとパーティションで仕切られて行き止まりとなっていた。

その手前のドアに、僕の名前と指示書が貼られていた。

『○○先生

中に患者がいます。
患者の状態を確認して、
先生の判断で必要な処置を施してください。』

奇妙な指示書で、全然ヘルプではない。

しかし、この病院の院長に会う手段もわからず、書かれた通りに中に入るしかなさそうだ。

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