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藤の舞
第12章 飢えと渇き
……ひっ…

近くに行き、しゃがんでみて初めてわかった。

その人は、
その女性は、裸で横たわっていた。

…奥さんだ…

昨日からの先生の行動、そして今日突然のヘルプ、更に怪しい指示書…

先生曰く、公開の客として呼ばれたのだと繋がった。

もう一度、指示書を思い出す。

『患者の状態を確認して、
先生の判断で必要な処置を施してください。』

まずは状態を確認する。

「奥さん、大丈夫ですか?
助けに来ましたよ。」

声を掛けながら、ペンライトの頼りない灯りで状態を確認していく。

頭には黒い頭巾をすっぽり被せられている。
鼻と口にだけ穴が開いていて、目のための穴は無い。

口には筒状のものをくわえさせられていて、バンドで固定されている。

筒には布が沢山詰められていて、
これ以上開けられないほど開かれた唇を、更に開いて、ハフハフと苦しそうに呼吸をしながら、

ング…ッグ…

喘いでいた。

取り急ぎ詰められた布を、唾液で固まった状態の布を、取り除いていく。
口内にも詰められていて、よく窒息しなかったと驚いた。

ハフゥゥゥ…

ギャグは外してないものの、大きく息を吐き、呼吸を整えだしたので安堵する。
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