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藤の舞
第8章 痒み
『時間が押してしまって…』

どのくらい意識がなかったのだろう。
先生は、そのせいとは言わないけれど、私のせいで次の患者さんに迷惑をかけたのは明らかだ。

今後の治療方針、
薬や家での注意点、
生理不順、
妊娠しにくいこと、

何より心配なのは、中に出されてしまって大丈夫なのか…


訊きたいことは沢山あったが、次の患者さんのことを考えると一つも訊くことができず、私は診察室を出た。

会計でピンクの袋が渡されて家に帰る。

歩きながら、電車で

中から出されたモノが伝って出てきている感覚があった。

考えなければならない事が沢山あるのに、

体が満たされたことで、幸せな疲労感があった。

気持ち良かった。

結局浮かぶ言葉はそれだけなのだ。


ピンクの袋には薬と使用法、患部を清潔に保つためのポイントが書かれたものが入っていた。
パソコンで作られた手製のもので、余白に、なるべく早くシャワーを浴びて膣内を清潔にし、消炎薬を塗るようにと、手書きで追記されていた。


指示通りバスルームに向かう。

服を脱ぐ。
大きな鏡をみて、剃毛されたことを思い出した。

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