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捨て猫の秘話
第1章 名前
ハルっていうのか……
「でもお前、ほんとに捨てられたの?」
猫……ハルの頭を撫でながら少年はたずねます。
『にゃーん』
猫はそうだ、とでもいうように鳴きました。
「そっ……か、でもいいじゃん?お前には名前がある」
少年には、名前がありませんでした。
それは、親から捨てられたからとか
そんなやわな理由じゃありません。
少年は自分で名前を捨てたのです。
自分の過去を全て消すように。
「お前とは友達になれそうだな。お互い捨て猫どうしだ……」
『なーぉ』
少年は寂しさを紛らわすように猫を優しく抱きしめました。
「ハル……お前、あったかいな」
そのまま、まぶたを閉じ
少年は深い眠りにつきました───