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変態王子の献身
第6章 リーナと看守
リーナは体に残る痛みと共に昨日のことを考えていた。

リッツシュタインの者がクリスの弟を生きたまま燃やしたという事実が恐ろしくなった。なぜ人はそんな恐ろしいことをするのだろうか。そして、捕虜になった自分も、そのように殺されてしまうのだろうか。そして、両国関係はどうなってしまうのだろうか。そして、自分がツォーハイム家に囚われたということは、もう父王には知られているのだろうか。

リーナはフィリップ王子のことを考えていた。天文学と数学を愛する気の良いフィリップ王子。

あの日、ツォーハイム兵に捕まらずにハネスと会うことができたら・・・。そして一日デートを楽しみ、そしたら近々きっと自分はフィリップ王子と結婚していたのだろう。フィリップ王子だったら、あんなふうに自分を縛り付けるような性行為をしないだろうと思った。優しそうなフィリップ王子。もしかしたら、フィリップ王子がここから自分を助け出してくれるのではないだろうかと思ってみた。しかし、白馬に乗った太った王子を想像すると、こんな状況にも関わらずリーナは一人で笑ってしまった。

その声を聞いてか、看守がリーナの元にやってきた。

「リーナ姫、どうかいたしましか?」

自分と同じくらいの年の看守で、リーナが来てからというもの、大抵の時間はリーナの元を任されていた。親切でまじめそうな青年だ。

「どうにもしないわ。」
と、リーナは答えた。

「でも、私は貴女の笑い声だか悲鳴だかを聞いたような。お体が痛みますか?お薬を渡しましたが、お使いになっていただけたでしょうか?」

「ありがとう。薬は使わせてもらったわ。大丈夫だから、気にしないで。ちょっと思い出し笑いをしただけなの。」

「思い出し笑いですか・・・。よかった。牢に入れられてから姫君がどんどん衰弱なさっているようで心配しておりましたが、お気持ちが明るくなられたようなら何よりです。」
看守は恥ずかしそうにそう言った。

リーナもこんな状況で心の余裕のある自分が不思議だった。
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