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変態王子の献身
第10章 スパイたちと作戦。
「褐曜石を統括するモリッツ家は、アレックスが亡くなった今どうなっているかご存知ですか?」

「うふふ。お母様を誰だと思っているの?」
フレッドがここに来た目的はそれであった。
彼のモリッツ家への疑りはだいぶ形を持ってきた。

モリッツ家と両替商シュルツ家は内通しているのだろう。モリッツ家の中にも敵がいると踏んでいる。それが彼の近衛兵の老スパイの言うことだ。

モリッツ家出身の母は、それを知っているかもしれないとフレッド達は踏んでいた。母を証人にできるだろうと。

リーナの誘拐を担当した兵団はモリッツ家に近いものが何人も居る。王家の会議でリッツシュタイン王族の誘拐を提案したのも、モリッツ家出身大臣のものだ。そして、会議内に居る戦争推進派もモリッツ家の息のかかったものだ。

戦争が起これば、どちらが勝っても負けても、シュルツとモリッツだけは利益を得る。もしかしたら、両家がツォーハイムとリッツシュタインの両者を転覆されて国家を樹立しようとしているのかもしれない。それもありえない話ではない。しかし、すべては推測の域であった。

「誰が今、亡きアレックスの後を継いでいるんだい?」

「もちろん、私の弟のダニエルの長女の夫よ。」

「それはだれですか?最近のことで、私もモリッツ家内の相続のことは存じておりませんでした。」

「ダニエルの長女の旦那さんは・・・。フレッド、もしかして何か企んでいるの?」
何かに気がついてしまったフレッドの母の血の気が引いていくのが見える。

「もしかして、彼はリッツシュタインの者ではないですか?」

「え!そうだけど。」

フレッドは黒幕を確信した。
おそらく、モリッツ家の婿養子であるその男と、シュルツ家は結びついているのだ。アレックスが死んで一番得をするのがその男であろう。父王とモリッツ家の血を両方継いでいるがゆえに、アレックスは若くして当主になったのだが、アレックスが死んだ今、家督相続者となったのは、リッツシュタイン出身のその男になったのだ。

母は気分を悪くして、自分の寝室に下がった。

フレッドはすぐに何通もの手紙を書くと、それを侍女に託した。



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