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やさしいんだね
第2章 情熱は二種類
 本番行為について、共に仕事を始めるにあたり、ソンが小百合に強要させたというわけではない。
 事実、本番はしないという、あくまでもヘルス的な概念で働く少女の存在も知っている。

 しかし、ソンのやっていることはハナから犯罪だから。
 今更罪をひとつくらい増やそうが、稼ぎが増えるなら上等だと小百合は考えている。

 何よりもそのおかげで、この忌まわしい仕事上に於いて初めて女性の悦びを感じることが出来たのだから。
 松浦の身体によって。


 松浦に呼ばれた日は、時計の針に視線を移す瞬間が一番憂鬱になる。
 時間よ止まって、なんて願ったって時計の針はキッチリ時を刻むし。
 どんなに小百合が松浦の腕の中で喘いだって、所詮は互いの需要と供給がマッチしているから定期的に繋がっているだけの話であって、ホテルから出てしまえば小百合の手元に残るのは自分の働きで得た金銭と、21時半から始まる塾のテストへの緊張感だけだから。

「ずっと一緒にいたいな」

 シャワーから上がり、小百合は松浦の身体をタオルで拭きながら顔を見上げた。
 どうしてこんなことを口走ってしまうのか自分でもわからないし、こんなことを言うべき相手でないこともよく理解している。
 しかし松浦は優しく微笑んで、小百合の濡れた髪を撫でた。

「そう言ってくれるだけで嬉しいよ」

 
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