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傍にいてもいいの?
第5章 惹かれていく心........
通りに出て、待っていたタクシーに乗った。部長の手際の良さに感心。だけど、自分の住んでいる住所を言うので精一杯。
大家さんからの電話....
交通事故って言っていた。あれからあたしの部屋がどれくらい大変なことになっているか想像もつかない。
とても大切なものは実家にあるけれど、ひとり暮らしを始めてからそれなりに大切なものは増えてきた。
殆どが彼との物なんだけどね........。
それでも、あの部屋はあたしの大切な空間として好きなもので固めて造り上げたもの。
それがこんなにも突然、壊されてしまうなんて........。
自然と沸き上がる感情にギュッと手を握りしめてしまう。
....初めてのお給料で買ったワンピース。
次のお給料で買ったのはその服に合うパンプス。
2年目には両親と旅行に行って、可愛い貝殻のついた写真立てを買ったなぁ........。
タクシーの中であたしの部屋にある想い出の品を数えていく。
出来るだけ無事に........
ひとつでも多く残っていて........
そんなあたしの握った手に、優しく温かな大きな手が被さってきた。
「笹倉.......」
呼ばれて伏せていた顔を部長に向ける。
「部長....」
そっと反対の手で頬を包まれる。
「大丈夫。俺がついてるから....」
そのまま、いつも間にか流れ落ちたあたしの涙を親指で拭ってくれた。