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心も抱きしめて
第1章 心
「石島さんの歴代の彼女は演技じゃないんですか?」

酔った勢いでそんな失礼なことを聞けば
「さぁな」
なんて苦笑いした。

1つ上で、モテた石島さんを恋愛対象に考えたことはない。
大学時代もいつも綺麗な女の子が傍にいたし
社会人になってもそれは変わらないんだろう。

年に1回のサークルの飲み会も
必ず参加してるけど、他の男子と違って疲れている感じがしない。

そんな石島さんに抱きしめられる幻想を初めて抱いた。
この人に抱きしめられたらドキドキするんだろうな・・・

「松元さんは今までの彼氏とのセックスは演技なんだ?」

今まで、飲み会で顔を合わせてもあいさつする程度で
こんな個人的な突っ込んだ話をするのは初めてだった。

「半分演技、半分本気。ですかね」

この返事も半分本気、半分冗談、だ。

「なんで演技するんだよ」

あ。ムクれた。

もう32歳にはなるはずの男の顔を可愛いと思ったのは初めてだ。

「女の事情です」

この話は男と話すもんじゃない。
それを感じとった美香が、さりげなく話題を変えた。

「石島さんは結婚しないんですか?」


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