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§ 龍王の巫女姫 §
第10章 春節の夜
「んー?こっちこそごめん…」
「何やってんだよ、早くしろよ」
「おいてくぞー」
転んだ少年のために数人が足を止めて振り向く。
彼は返事をした後で、水鈴を見上げた。
「わ、お姉さんキレイだな!」
「え…」
「ぶつかってごめん、これあげるよ!」
彼は手に持っていた札の束からひとつを抜き取って水鈴に渡すと、仲間のもとに戻っていってしまった。
「何かしら…」
水鈴はきょとんとしている。
赤い色の長細い札には、金色の文字が刻まれていた。
『 福 無 双 至 今 朝 至 』
「春聯( シュンレイ )だな」
「……?」
気付けば彼女の隣には黒の短袍姿の炎嗣がいて、上から赤い札を見下ろしていた。