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§ 龍王の巫女姫 §
第16章 淡く儚く 愛おしく
水鈴は座ったまま背を伸ばして、唇を下から彼の口に押し付けた。
そっと二人の唇が触れあい
数秒のうちに離れる。
どうせ、許されない想いを抱えたこの身──
花仙の側にいるわけにいかないから、せめて最後の思い出に。
「今まで本当にありがとう」
「……!? 何故…」
さようならの一言は辛すぎて言えなかった。
花仙を見上げた水鈴は、手を離してほしいと無言で意を伝えた。
手を……
「──…花仙?」
離してくれないと……
「…あの…っ」
「……、──無知は直っていないようだ」
ぐいと手を引くと同時に二人の位置が逆転し、水鈴は木の幹に背をつける形になった。