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§ 龍王の巫女姫 §
第4章 狂気
火の手が激しい集落から離れて、花仙は森に逃げ込んだ。
それは村での惨劇をこれ以上彼女に見せたくないという狙いも含まれていた。
「…彼等は誰ですか…!?」
震える水鈴…
しかし説明している余裕はない。
既に重傷を負った彼は女を抱いて走るだけで精一杯
土を踏む度にその衝撃が傷口に響く。
そんな彼の走るスピードはしれてるわけで、背後にはすぐ松明が迫ってきた。
「待て!止まれ!」
行く手の樹木に、飛んできた矢が刺さる。
「弓矢はしまえ、女に当たったらどうする」
「…ハァ…だがあの男…!!」
そんな言い争いがおこなわれていた。
しかし花仙が耳をかすことはなく
森を抜けた二人は堂に辿り着いた。
強い風によって一面に落ち葉が降り積もっている。
その量は彼女が目覚めた時の比ではなかった。
「……ハァ…ハァ、く…ッあ」
「──…!」
とうとう崩れた花仙──
葉々の上に投げ出された水鈴。
ボロボロの彼に水鈴は何を言うこともできない。
──そして追手が現れる。
彼等は水鈴に被さり、二人がかりで抵抗する彼女の腕をとって取り抑えた。
「離して!」
「見ろよ…この女の髪、陛下の御言葉の通りだ」
「──?」
堂の前にぞくぞくと集まる武装した男たち。
彼等はよってたかって水鈴の銀髪を物珍しく眺めながら、彼女を立たせて連れ去ろうとする。
「…クッ…ぅ、…ハァ、 水鈴…様…」
身体が全く動かない。
美貌を歪ませ、花仙は弱々しく手を伸ばす。
「この男は村の人間だな…」
「捕らえろ!」
伸ばされた手を男が掴み捻りあげ、もう片方の手と共に後ろ手に縛った。