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贄姫
第5章 伍
「いいか、椿。
妖を使役するならば、精気を与えなくてはいけないんだ」
「精気? なにそれ」
「魂とも呼ぶようなもので、気力のことを指す。
見てろ」
そう言うと、周は息を手のひらに吹きかけて
コロコロと両手のひらを擦り合わせた。
それを凝視していると、その手のひらから
光り輝く球が現れる。
「わ、なにそれ」
「これが精気だ。
これを、使役する妖には与えないと、彼らは死んでしまうんだ」
「それ、あたしにもできる?」
「椿は不器用だからな…。
お前ができなくても、俺が護ってやるから大丈夫だ」
「それ、できない時って他の方法ないの?」
「あるぞ。空気をこうして膨らますように精気を具現化したり
呪符に込めたり…」
そっちの方が難しくない?
椿は口を尖らせた。
「あとは、男女の営みもそうだ。
気を巡らせることができて、手っ取り早いと聞く」
「いとなみ?」
説明をしようとして、周がハッとした顔をした。
そして、気まずそうにそっぽを向く。
「忘れろ。椿には必要ない」
「なにそれ、教えてよ!」
周に掴みかかったのだが、周は苦笑いして椿を避けた。
そのうちな、と呟く。
クシャクシャと椿の頭を撫でた周の顔が
どこか悲しかったのを思い出す。
知らなくていいんだ、と
周が小さく呟いたのが、耳に残って離れない。