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贄姫
第5章 伍
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目が覚めた時、ここが一瞬どこだか分からなかった。
飛び起きると、お腹に鈍い痛みが走る。
それどころか、全身のあちこちが痛い。
随分懐かしい記憶だった。
あの時の周は、どこか悲しそうだったから、椿はよく覚えていた。
「いたたた…」
しかし、お腹の中心の痛みを除けば、
びっくりするほどに疲れがとれ、
それどころか、とても元気だった。
打ち掛けを手繰り寄せて、
椿はもう一度丸まった。
「よお、起きたか」
その椿の打ち掛け剥ぎ取って
赤い目をした鬼がぞっとするような美しい笑みで見下ろしてきた。
椿はその鬼、瓊乱から打ち掛けをひったくり
身体に巻きつけるようにして、後ずさりした。
「おいおい、ずいぶんだな。
昨日、女にしてやったのに」
「あっちへ行って」
迫ってくる瓊乱から逃げようと
椿はどんどんと洞窟の奥へと向かう。
面白がっているのか
瓊乱は舌舐めずりしながら椿に迫った。
「行き止まりだぞ」
そう言って強引に椿を引っ張ると
瓊乱は断りもなしに唇を押し付ける。
抵抗したのもつかの間
押さえつけられて、嫌と言うほど舌を犯される。
「朝からお前は、なんていう匂いさせてんだよ…」
瓊乱のハスキーな声が椿の首元から聞こえた。
首筋を瓊乱が丹念に舐めている。
ザラザラした舌触りは人間のものではない。
ゾッとするのと同時に
くすぐったさと気持ちよさに身をよじった。
「やめて、瓊乱」
「それで断っているつもりなら
お前はまだ男を知らなすぎるな。
もっとも、昨日女になったばっかじゃどうしようもないか」